されざる想い




広い宇宙の、とある平和なプラントの1つ。
ここに、クルーゼ家とフラガ家という名門の家系がございました。
両家は長きに渡って何かと競い合ってきた因縁の家系でございます。先代が亡くなられ、若くして当主になられた現当主のラウ・ル・クルーゼ様とムゥ・ラ・フラガ様はくしくも同じ御年28歳。学生時代からの宿敵との言われる仲でありましたので、両家は尚一層の対抗心を燃やしておりました。
そんな両御当主はそこそこいいお年でありながらも、未だ一人身でございました。お二人とも頭脳は勿論、容姿も端麗で(といってもクルーゼ様のほうは常に仮面を身につけていらっしゃるのですが、お噂では仮面の下はかなりの美形だとか)女性関係の噂は色々とございましたが、伴侶とする相手は敵家よりも優れた人物を探さねばならないという事で、なかなか良縁には恵まれませんでした。決して選り好みが激しいなどという理由ではございません。
お二人は一層事業に力を入れましたが、両家の勢力は相変わらず膠着状態のままでございました。
そんな折、ラウ・ル・クルーゼ様がかねてよりお気に召していらした優秀な部下の一人を養子として跡継ぎと致しました。これを聞きつけたフラガ家の方は大変焦りまして、すぐさまフラガ家に見合う優秀な逸材を探し出しました。
かくして両家は優れた後継者を養子として迎え入れ、再び火花を散らす事になりました。


そしてこれがうら若き少年達の悲しい運命の始まりでございました。




+++



《SIDEアスラン》

本日はプラントの平和を願って、最高評議会議長主催のパーティが行なわれる予定である。
パーティにはプラントの有力者達が招待され、当然のようにクルーゼ家、フラガ家の面々も多数招かれていた。
数日前よりクルーゼ家に養子として入ったアスランは屋敷の一室で硬くなっていた。アスランはもともと高貴な生まれではあったのだが、まだ若くこのような催しに参加するのは初めてであった。それに今日はアスランがクルーゼ家に入ってから初めての公のパーティである。パーティでは人々の好奇の目に晒される事は間違いないだろう。無論そのために先日から様々な教育を受けてきたが、それでもアスランは心元なく感じていた。何しろ急に決まった養子縁組。アスランの父親は二つ返事で了承したが、アスラン本人は正直戸惑っていた。上司としては尊敬し、慕っていたクルーゼであったが、養子と言うのはまた別問題なのである。あれこれと考えていると軽く部屋の扉がノックされた。返事を返すと、この家の当主であるクルーゼが顔を見せた。

「出発なさるのでしょうか?」

アスランは椅子から立ち上がって軍服の皺を直す仕草を取った。

「アスラン、パーティにその格好で行くつもりか?」

突然のクルーゼの問にアスランは驚いて返答に詰まった。何しろ服の事なんて考えてもいなかった。

「え?公式の場ですから、この軍服で良いかと思ったのですが・・・」
「お前は私の娘なんだ。もっとそれなりの格好をしてもらわねば困る」

確かに今までなら軍服で十分であったが、クルーゼ家の一員となった今はそうもいかないのだろう。はい、と答えかけて、だが妙な違和感にアスランは動きを止めた。
クルーゼは今、娘と言わなかっただろうか?

「あの、隊長・・・」

ちなみに隊長というのはアスランが以前からクルーゼを呼んでいた敬称である。『父上』と呼ぶのはどうも抵抗があり、養子となった今でも呼び方はそのままであった。

「どうした?」
「私は・・・男なんですが」
「無論了承している。だが、娘は娘だ」

クルーゼは気にした風もなく窓辺へ歩み寄り、その金の髪に風を受けて微笑んだ(ように見えた)。

「アスラン。お前は私の娘でありザフト・コンツェルンの跡取りだ。今日はしっかり頼むぞ」
「はい」
「何しろ、今日はあのムゥの息子とやらも来るらしい」

その名前が出た途端、クルーゼの視線が鋭くなった(気がした)。アスランもクルーゼ家とフラガ家の関係は良く知っていたし、アスランがクルーゼ家に入るや否や、まるで合わせたかのように養子を取ったというのも噂に聞いている。

「どんな木偶かは知らんが、お前程の人物などそうそういまい。せいぜい格の違いを見せつけてやれ」
「はい」

クルーゼの言葉に短く答えてアスランは敬礼をした。そんな様子をみてクルーゼが声を上げて笑った。

「フフフ、今やお前は私の娘なのだから、そんな事はしなくてよいのだよ」
「しかし・・・」
「まぁそんな所もかわいいのだがな。アスラン、お前が着替え次第出発する」

急げよ、と言って部屋を出るクルーゼの背を見送ると、入れ替わりに衣装を抱えたメイドが入ってきた。
娘といっても所詮は男。アスランはさすがにスカートが用意されていなかった事に安堵し、真っ白なスーツに袖を通した。形はさしずめ軍服の白バージョンといった所だろうか。ぱっと見はまるでクルーゼとペアルックのような感じであり、アスランとしては大変気恥ずかしいのだが、クルーゼのほうは実に満足気であった。


会場に着くと既に多くの人々が集まっていた。アスランはその中を実に堂々とした足取りで進むクルーゼの後に続いて入場した。
会場に入ると周りの視線が一斉に集まるのを感じる。会場に集まった人からすると、アスランは名立たるクルーゼ家の跡取りとして迎えられた稀有な人物なのだからこの視線は仕方がない。寧ろこの視線に耐える事は跡取りとなったアスランの義務とも言えるだろう。皆アスランがどんな人物か興味津々といったところだろう。どこからどんな因縁をつけられようとも冷静に対処しようと身構えていたアスランは、どこぞの令嬢が頬を染めるのにも、食い入るように見つめる男性の視線に込められた意図にも全く気が付きはしないのだった。
幸いフラガ家の面々はまだ来てはいないようで、クルーゼは機嫌よく辺りの人々と挨拶を交わしていた。だが、しばらくすると入り口の方でなにやらざわめきが起こリ始めた。

「来たか」

クルーゼの周りの空気がすっと張り詰めるのがアスランにも分かった。
案の定、フラガ家当主のご到着らしい。アスランは無意識にクルーゼの背後へと回った。モーゼの十戒の如く人込みの中に道ができ、フラガはあちこちに挨拶をしながらも真っ直ぐにクルーゼの方へと歩み寄ってきた。

「よう。元気そうだな」
「フン、お前こそな」

フラガとクルーゼはあからさまに火花を散らし始めた。

「へぇ。後ろにいるのがご自慢の娘さんかい?隠れてないで、お顔を拝見させて頂きたいものだな」

フラガは持ち前の軽い口調で言うと、にっと口の端を吊り上げた。

「お前こそ、どこぞの馬の骨を跡取りにしたそうじゃないか」

クルーゼの方は相変わらず仮面で表情がわからないが、声はいつにもまして低い。

「いいぜ、こっちも自慢の息子を見せてやるよ。一緒にご対面といこうじゃないか」

フラガの声にクルーゼはアスランの腕を引いて正面へと立たせた。
アスランはずっとこの部屋にいたというのに、何故か急にこの空間に引きずり出されたような気分だった。周りの大勢の人々は皆一様に同じ顔に見えたが、やがて一人の少年の姿にしっかりと像が結ばれた。
アスランは瞬間的に息を呑んだ。
その顔には見覚えがあって、見間違いかと思って瞳を凝らした。
一方クルーゼとフラガの二人も、互いの跡取りを見遣り固まっていた。
雪のような白い肌。繊細な顔立ち。気品の漂う風格。
二人の驚きもある意味仕方がない。敵家の養子の情報は事前に入念に調べさせていたのだが、片や根暗なメカオタク、片や軟弱な泣き虫との報告を受けていた。よって報告から想像していた人物と目の前の人物とのギャップに驚き、両当主はしばし言葉を失ってしまっていたのだった(写真くらい見とけよ)。
しかし、そんな養父達の様子にも気付かないくらいに驚愕に目を見開いていたのは、当の跡取り達であった。

「キラ・・・キラ・ヤマトか・・・?」

しばしの逡巡の後、アスランはようやく口を開いた。

「アスラン・・・アスラン・ザラ・・・?」

相手の少年も戸惑ったような声音で答え、二人はじっと互いの姿を見つめあった。
見間違いなどではない。
ずいぶんと久しぶりの再会では会ったが、面差しは記憶の中の友人に違いなかった。
忘れた事などなかった。
ずっと会いたいと、もう一度会いたいと思っていた人。
なのに。

「「どうしてここに・・・?」」

二人はそれきり口を閉ざして固まってしまった。
頭の中が真っ白だった。今日ここにくるのはライバルの家の木偶息子の筈だ。
それなのに。
クルーゼの手がそっと肩に置かれて、アスランはようやく我に返った。

「こちらがアスランだ」
「こっちはキラだ」

紹介されて仕方なくフラガに会釈をすると、クルーゼとフラガは再びばちばちと視線をぶつかり合わせた。

「よくもまぁ、何処からか探し出したものだな」
「お前こそ。なるほど、確かに秘蔵っ子ってもんだな」

二人はお互いの跡取りをそれなりに認め、褒めているつもりなのだが、当の本人達はまるでそんな気がしない。というか当人達の頭の中はそれどころではなかった。
その様子に気付いたのか、クルーゼはアスランの肩に手を回しくるりとフラガに背を向けた。

「そろそろ失礼する」
「つれないこったな」

フラガの軽口には答えず、クルーゼは人並みを掻き分けずんずんと進んで行く。

「あれが宿敵の顔だ、忘れるな」

不意に耳元で囁かれ、アスランは慌てて顔を上げた。

「は・・・い」

小さな声で答える。
忘れようがなかった。この何年もの間、ずっと思ってきた顔。面差しはずっと大人びて精悍になった気がするけれど、優しい眼差しや柔らかな印象は昔のままだ。

「キラ・・・」
 
振り返ってもう一度だけ人込みの中に埋もれるその顔を見た。



それがキラとアスランの再会。そして二人の新たな出会いだった。













うわあ。なんでしょう、コレは。
自分どれだけロミジュリが好きなのさ、って感じなのでUPするのを躊躇いましたが、今度はジャンルも違うし話の感じも全く違うので気にせずUPです。えぇ、ロミジュリベースなんです、これでも。だって本編がまんま許されざる恋なんですもの(邪ビジョン)。そしてパパーズ設定、色々言いたい事はありましょうが見逃して下さいませ。
アニメから設定を推測しきれない私はとことん捏造する道を選びました。
許されたら続きます(誰に)。






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