いつか誰かのために 




よく晴れた日だった。
川べりに腰を下ろして少年は釣り糸を垂らしていた。穏やかな風が織り成すのんびりとした空気は、時間の流れすらも緩やかなように感じさせている。
ただでさえ長すぎる時間。与えられた、終わる事のない生。
その長い時を自分はこうやって無為に過ごすのだろうか。
平和な世は考える時間を与えすぎる、と少年――は小さく息を吐いた。

連れのグレミオと共に国を出てもう3年。
色々と彷徨い歩き、この村に滞在してからだいぶ経つ。危険な森のすぐ側であったが、これと言っておおきな事件も起きてはいない。実にのどかで平和な村だった。

「坊ちゃ〜ん、昼食ですよ」

宿に通じる道の方から声がして、グレミオが包みを持ってやって来るのが見えた。

「ありがとう」

は釣竿を立てかけて包みを受け取ると、開けることなくそれをじっと見つめた。
こうして一日中釣りをしていても食う事には困らない。そんな生活には慣れすぎていたが、疑問がないわけではない。

「・・・坊ちゃん、どうしました?」

その様子に気付いたグレミオは心配そうに声を掛けてきた。
は口が数の多い方ではなかったが、グレミオには比較的色々な事を話していた。
そして、今はグレミオしか話をする相手もいない。
だから思い切って、考えていた事を口に出した。

「僕は人と関わるのが嫌で国を出る事を選んだ。こうしてひっそりと暮らしていく事で、確かにソウルイーターが他人に迷惑を掛ける事はないけれど、グレミオにはずっと迷惑掛けっ放しだ」

「私は迷惑だなんて思ってませんよ」

グレミオは微笑んでそう言うとの隣に腰を下ろした。

「坊ちゃんと一緒に来たのは私の意志です。それに私は坊ちゃんのために何かしてるのが生き甲斐なんですから」

「生き甲斐・・・か」

「・・・そうですね。坊ちゃんも何か必要なのかもしれませんね」

「何か?釣りをするのは好きだし、この生活も気に入ってるけど・・・」

「人は多かれ少なかれ誰かのために何かをしたいと思うものですよ。私だってたった一人では料理の腕を振るおうとは思いません」

「そうなんだ」

家事全般はお手の物であるグレミオがそうなのだから、自分など一人になったら本当に何も出来ないのだろうとは嘆息した。

「ささいな事でも大切な人の為になるって思うとできるものなんですよ」

「結局は自己満足か」

「そうですね。でも大切な事ですよ。人が、一人で生きてはいけないっていうのはそういう事かもしれません。だから、坊ちゃんも自分を満足させられるだけの事が見つかるといいですね」

言われて、は首を捻った。

「僕もグレミオのためにご飯を作ろうか?」

「いえいえ。それは私の仕事ですから坊ちゃんが取っちゃダメですよ。坊ちゃんには、坊ちゃんにしかできない事がきっとある筈です」

(自分にしかできない事?)

は自然と厳しい表情で手袋が嵌められている手に目を遣った。

(こんな呪われた身で、何が・・・?)

「案外、その力が役に立つのかもしれませんよ」

そう言うとグレミオは静かに立ち上がった。
あっちで見張ってますからゆっくりと食べてくださいね、と告げてグレミオは宿の方へ戻って行った。
一人になったは青空の下で昼食を広げた。
パンを口に運びながら、先程のグレミオの言葉を思い起こす。

他人のために何かすればこのやりようのない空しさから開放されるのだろうか?
グレミオの買い被りすぎだと思う。自分はそんなに出来た人間ではない。トランの事にしたって行き掛かり上そうなってしまっただけで、は別段正義感溢れる人間でもないのだ。
それでも、いつか誰かのために、この力が役に立つなら・・・・。

「あっ、すみません。こっちはちょっと・・・」

すぐ近くでグレミオが人払いをしている声が聞こえてきた。
トランの英雄であるはうっかり人前に出る事もできない。こんな自分が本当に人の役に立てることがあるのか、とは疑わしく思う。

「村の子供?」

空になった弁当箱を手にグレミオの元まで行くと、は尋ねた。

「いいえ。見慣れない少年達でした。坊ちゃんくらいの年格好でしたよ」

ごちそうさま、と言って渡された空の包みをグレミオは笑顔で受け取った。

「今日は釣り日和ですね。釣れてますか?」

「さっぱり」

は不満そうに言うと川の方へ足を向けた。

「夕飯までには頑張って釣るよ」

「楽しみにしてます」

立ち去る背を見送りながらグレミオは先程会った少年達の事を思い出した。
少年の一人がによく似ていると感じたのだ。顔や背格好というよりも、なんとなく雰囲気が似ていた。 今の、というよりは昔の――解放軍を率いていた頃の彼を思い起こさせる空気。
人懐っこい笑顔を見せていた少年はきっと仲間達から好かれているのだろう。
追い払ってしまったが、坊ちゃんにもこういう友達ができたら良いのに、とグレミオは心から思ったのだった。





森の方から子供の悲鳴が聞こえたのはその直後の出来事。









坊ちゃんイベント直前。
最初にトランに行く際のワームとの戦闘で、 見るのも嫌なこの敵にどうしても勝てなくて、やっと倒した時にはホッとしたのですよ。 コイツは二度と見なくて済むんだ〜、って。
だからこのイベントで再び出てきた時にはそれはもう(泣)!!
まぁそんな事は置いといて、坊ちゃんと2主の出会いを書くつもりが出会ってないですよ。あれあれ?





BACK






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送