は花のエトルリア ―序―



大陸中を巻き込んだあの戦争から早一年。
戦火は各地に大きな爪痕を残したが、各地では多くの者の努力により復興が行われつつある。
ここエトルリア王国でも優秀な将達、そして国民全体の努力により着実に復興しつつあった。暗殺された筈の先王の子、ミルディン王子が存命にあった事が分かると国民の希望は増し、ますますの活力ある国の再建が行われている。
そして人々の暮らしにも多少の余裕が出来てき始めていた。



「親善パーティ、ですか?」
セシリアは目を瞬かせて目の前のきっちりとした衣装を着こなした人物―即ちこの国の王子―を見つめた。
「あぁ」
ミルディンは大変な事になった、と一言言うとため息を吐いた。
確かセシリアは重大な用件があるから、と呼ばれた筈であった。国を立て直すという事は大変な事であるが故、今回もさぞや重要な問題かと思って気構えて来てしまった。わずかに脱力したのを気付かれないように、気を取り直してしゃんと背筋を伸ばした。
「この間の会談でギネヴィア王女の提案で決まったのだよ。戦後の混乱も少し落ち着いて来た頃だし、ここらで国と国との結びつきを強めるために各地域の代表を招いて盛大にやるとの事だ」
それはなかなか良い提案ですね、とセシリアは微笑んだ。
「ああ、大変すばらしい。だが、大変な事に記念すべき第一回の主催国が我がエトルリアに決まったんだよ」
「そうでしたか」
それは確かに大変ですね、とセシリアも苦笑した。
「とは言っても、今回集まるのは殆どがロイ将軍の軍で共に戦った者だし、私としては気負わず自然に楽しめるパーティにしたい」
「はい」
「しかし余裕は出来たと言っても、実際のところ皆まだまだ国の再興に忙しい。そこでセシリア。この件に関しては君に一任したいと思うのだが、やってくれるかい?」
「えっ」
魔道軍将である自分に一任する理由が分からずにセシリアは声を上げた。任せるといわれても軍人である自分には何をすべきかさっぱり分からない。
「こういった事は文官に任せた方がよろしいのではないでしょうか?」
「心配ないよ。君に宴会の準備や招待状の手配なんかをやってもらいたいわけではない。彼らは頭が固いからね、セシリアにはメインイベントを考えてもらいたいんだ」
「メインイベント・・・?」
「これは今後の国の未来をも左右しかねない大事なパーティなのだから、ありふれた企画ではつまらないだろう。客人だけでなく、国中で楽しめるような事はないだろうか?」
セシリアはうーんと首を捻った。ミルディンの言葉にそんなにも国の事を考えているのか、と感動すら覚えたセシリアはなんとしてでも期待に応えたいと思い、しきりに頭を働かせる。
「・・・では、こんなのは如何でしょうか?」
セシリアは頭に浮かんだ1つをそっと告げた。
それは国の一大イベントには向いているとは思わなかったが。
「・・・任せるよ」
不敵な笑みを浮かべたミルディンの言葉に、セシリアのやる気にも火が着き始めていた。


+++


ここはエトルリア王国宮殿内、大会議室。
本日は可能な限りの家臣が集められ、何やら物々しい雰囲気が立ち込めていた。
セシリアがミルディンより聞いた話を告げるとあちこちからざわめきが起こった。
「大体の手筈は資料にまとめましたが、メインイベントの説明に入ります。今回は各国の要人並びに国民も楽しませるという目的をもちまして、王宮に仕える私達で『舞台』をやる事になりました」
舞台、と聞いて室内は一気にどよめいた。
「この忙しい時期にそんな手間の掛かることができるか!」
「そうだ、そうだ」
「だいたいなぜ私達がそんな事を!」
騒ぎ立てる人々を前にセシリアは黙ってスっと片手を挙げた。
では、他に提案がおありの方は?、とにっこりと微笑む。
途端に水を打ったようにしんと静まり返った。
魔道軍将の背後になにやら妖しい気が漂って見えるのは気のせいではないだろう。
「無ければ決定いたします。ご心配なく、練習も皆様の仕事に差し障りのないよう私が調整いたしますわ」」
キッパリと断言されたが、皆一様に不安は隠せない。
「ところでセシリア、一体何の劇をやるのだ?」
それまで難しい顔をして黙って聞いていたダグラスが至極もっともな質問をしてきた。
「実はよその大陸に伝わるという素晴らしい悲劇を手に入れているのです」
セシリアはうっとりとした表情で答える。
「配役はどうする?」
「そうですわね。皆さんお忙しくてやりたがらないと困りますから、投票制に致しましょう」
余った方は大道具や裏方になりますけど、とセシリアの言葉に一同は所詮逃げられはしない事を知る。



後日、王宮内に登場人物と簡単な説明を記した書類が配布された。
『ふさわしいと思われる方の名前を記して御投票下さい』

Romeo&Julietto 

それは誰も知らない、異国の物語。





:::::To be continued:::::





・・・という事で続きマス。
微妙にパラレル、というかありえねェよ、って事が出ても気にしませぬように。
題名は「所は花のヴェロア〜」という冒頭からです。
今回全然出てませんが次からはパーシバル、クレインメインな筈です。
今のところ2、3話くらいの予定で。



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